【ビダモン2018】美大実技試験と学科試験に関するたった1つのアドバイス

2018年2月5日(月)

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美大受験生の疑問にお答えする、略して「ビダモン!」シリーズをお送りしています。
これまでのビダモンはこちら。
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ムサビ中心に書いてますが、他美大入試でも参考になるはずです。


今日明日とタマビムサビの学科試験が続くので、実技試験と学科試験についてのアドバイスをそれぞれひとつ。


たったひとつの実技試験のアドバイス、それは
問題文をちゃんと読もう。
です。

「え?それって学科試験のアドバイスじゃないの?!」「もっとさ、『こんな道具があると便利!』とか実用的なアドバイスはないの?」と感じるかもしれませんが、これほど実用的で、即効力があり簡単に得点を稼げる方法はありません。

これには2つの意味があります。

一つ目はそのまま、「よく読んで条件をちゃんと踏まえないとダメ」という意味。
例年、視覚伝達デザイン学科や基礎デザイン学科、デザイン情報学科等の試験は問題文に「条件」「設定」が多く書かれてます。これをよく読まないと出題意図とは全然違うものになってしまうことがあるの。
去年の基礎デ・感覚テストの問題文を引用します。
たぶん皆さんが想像されてる美大「デザイン」問題と違うのでびっくりしますよ。


「出題意図と評価のポイント」もご覧ください。この内容から「多分出題者はあの先生だろうなあ・・」と推測できたりしますが(笑)
情報収集力、地域への興味、読解力、理解力、経験力、イメージ力、そして表現力を問われてるってことですね。デザイナー希望者なんだから当然といえば当然なんですが。
それとデッサン試験で条件に「天地の矢印を描きなさい」とあったら、条件である以上書いてなかったら減点対象になる可能性があります。机上静物モチーフだと天地矢印はいらないと個人的には思うけど、「条件」なので。「よく読む」とはそういうこと。


ふたつめは・・の前に、この単語を解説しないといけませんね。
「モチーフ」という言葉がありますが、美術用語としての「モチーフ」は主に2つの意味があって、1つは「絵や彫刻で再現される対象」
厳密にはイコールではありませんが、他の日本語だと「対象」「静物」が一番近い。
だいたいの場合は、布・ガラス・鉄・植物・プラスチックなど異なる質感・形態のものをモチーフにし、布は布らしく、ガラス瓶はガラス瓶らしく「質感を描き分けできるか?」「画面にバランスよく納めているか」「形がちゃんと取れているか」「調子・陰影を把握してるか」等を見る試験。

例えば工芸工業デザイン学科の鉛筆デッサンが典型例で、例年の問題文には
===========
「机上のモチーフをデッサンしなさい」
===========

とだけ書かれてて、「いかに対象の特徴を捉えているか?忠実に形や質感や量感等を再現し、構図が優れているか?」等の「基礎デッサン力」「描写力」が問われています。
多くの方になじみのある、すぐに想像できる「モチーフ」はこっちの意味じゃないかと。今年の視デ・デッサンもそうだったんじゃないかな。
 
そして2つ目は、「題材や動機」という意味。
違う単語だと「テーマ」「きっかけ」「イメージ」が近いかな?
あくまでもそこに存在するのは「きっかけ」であり、そこからどう発想を展開させたかを見るもの。

実は油絵学科油絵専攻のデッサン試験がそれです。


問題文には
=======
「机上のモチーフを自由に描きなさい」
=======

としか書かれていません。
でも、この「自由に」がクセモノ。
デッサン試験だし、目の前にモチーフが組まれてるのでつい 「見たままを」を描いてしまいそうですが、「自由に」から「そのままを描くのではなく、現象や印象を自分なりに解釈し発展させ、それを自分なりに構成して自由に表現しなさい」と言われてるんですね。この「自由に」を読み飛ばしてしまうと、たったそれだけなのに出題意図から離れてしまい点数が下がる、と。

「出題意図と評価のポイント」にはこう書かれてます。
==============
モチーフは『包む』という言葉の括りで集められ、(中略)デッサンが単に対象のかたちを写し取るだけのも のではなく、空間とものとが接している部分の解釈とその表現にこそ、空間の性質が表れ、ものを描くことになるという基 本に立ち返り、「空間」さらには「時間」を描き出せているか が、評価へとつながっている。
==============

モチーフを見てそこから「包む」というキーワードに気が付いたかどうかが問われているのです。昔はデッサンで「基礎力」を見て、デザイン等で「発想力」を見るのが一般的でしたが、今はその境目がなく、ただうまくきれいに絵が描ければいい時代ではなくなってます。

というわけで、「問題文をちゃんと読もう」の2つめの意味は「問題文に隠されたヒントを探し、そこから自分なりに発想を広げよう。」
逆にどうにでも取れる問題文はどう解釈してもいい、むしろ出題者の想定を超える作品を作ってほしい、という意図があるはずなので、そういう時はおもいっきりやっちゃってください。責任は取りませんが(笑)


そうなんです。
確かに20年前ぐらいの美大入試では、大量の受験生を手っ取り早く絞るために「いかに石膏像をうまく描けるか」「手をそっくりに描けるか」等がポイントにあったので、現状を知らない(調べない)人が自分が受験した20年前ぐらいのことを例に出し「他では使えない美大受験用のテクニック」として批判することが未だにあります。
もちろん短い時間で描いたり、基礎的なデッサン力・デザイン力のトレーニングは今も必要だしやってるけど、とっくにムサビやタマビの入試ではそれだけの能力は求めていません。ちょっと調べればわかることなんだけど。

ムサビタマビの実技入試はこう考えて欲しいんです。
「教員からのメッセージであり、初めての課題」

「この出題をあなたはどう解釈し、表現しますか?→私たちはそれを理解できる(超える)人材が欲しいんです→そういう人のためのカリキュラムを用意してますよ」なメッセージが込められてるのが実技試験であり、そのまま3つのポリシー(アドミッション・カリキュラム・ディプロマ)になってるのね。

しかし、すごいと思いません?
問題文を理解し、更にそこから発想を広げ、独自性を入れ、アイデアスケッチをし、下書きをし、色を塗り、場合によっては文章もつける。ムサビのデザイン系だとこれを受験生は「3時間」でやり遂げてるんです。
美大・・特にムサビやタマビの実技試験では、読解力、発想力、描写力、表現力、瞬発力、持続力、価値創造力、ストレス耐性、課題発見・解決力、体力がそこで問われてる。ある先生が「1時間もじっと座ってられない生徒が増えてるって言われてるのに、美大受験生は3時間とか6時間とかずっと集中して座れる人しかいないわけでしょ。それだけでもありがたいし合格にしてあげたいよね」とおっしゃってました(笑)

2020年度から暗記型のセンター試験が廃止され、思考力・判断力・表現力を問われる新テストが導入されるのはご存知の通り。「各大学は、従来の画一的なペーパーテストから、アドミッションポリシーに基づく様々な評価方法を組み合わせ、受験者の学力を多面的・総合的に評価する入試へと転換することが求められているウンタラカンタン」と言われてるけど、とっくにムサビやタマビは実技試験でそれをやってるし、それ以上のことをやってるんですよね。「みんなムサビやタマビを参考にすればいいのに」と手羽は本気で思っています。
 
 

次に学科試験のアドバイス。これもたったひとつ。

ちなみに、「学科試験」という言葉も美大受験用語です。国語・英語(外国語)試験のことなんですが、一般大学の入試は学科試験しかないから区別する必要ないのよ(笑)
美大や音大、体育大学はどうしても実技試験に対する「学科試験」という表現を使わないと区別できない事情があり。

「受験生の多い学科試験日に発生する通称『合格発表屋』に気をつけろ(大学とは一切関係ない)」とか「ムサタマの英語対策は美大英語.comさんが参考になるよ」とかいろいろ伝えたいことはあるんですが、これだけ言えればいいです。

とにかく埋めろ。空白を作るな

これには二つ意味があります。
一つ目は「名前や受験番号を書き忘れちゃダメよ」という当然の話。
どんなに点数が良くても、これがなくちゃ採点されません。

二つ目は「わからないところも埋めよう」です。
すんごくもっといないのは、マークシートを埋めてない人。
どれでもいいから塗りつぶしてたら1点ぐらい入るかもしれないのに、意外と埋めてない人が多いんです。間違ってマイナスになることはないよ。最後は鉛筆転がしてでもとにかく埋めましょ。あきらめない気持ちが大事。

またムサビの英語はマークシートだけじゃなく記述式があるんだけど、ムサビ英語の先生がこうおっしゃってました。
=========
ムサビの外国語試験は「基本的な語彙・文法を知ってるかどうか」。奇問難問は出さないし、ムサビの試験は点をあげるために問題を作っている。部分点もあるから、 あきらずに最後までがんばって。
=========

と。

例えば、英語で
Let’s play baseball in the park を訳しなさい
という問題で配点が5点の場合、Let’sで1点、 playで1点、 baseballで1点、 in the parkで1点、全部正解で1点と部分点を出してるそうです。(あくまでも「例えば」です)
つまり、「公園でサッカーをやりましょ!」と答えた場合、通常なら0点かもしれませんが、ムサビの場合は3点の部分点が入る可能性があるってこと。(あくまでも「例えば」です。1点しか入らないかも)
わからないといって何も書かないのはもったいなく、どうしてもわからなかったら好きな歌の歌詞を書いておくと、もしかしたら1点ぐらいは入るかもしれません。 (ほんとにくどいけど「例えば」ね)

記述式の数学も考え方は同じで、答えだけ見てるわけではなく、そこにたどり着く計算式も部分点に入ります。数学の先生に聞いた話ですが、
「ここまで頑張って解こうとしたんだね。そのチャレンジ力が大事!」
「自分の論理展開をちゃんと整理して書いてるぞ。きれい」
「ほほー。これは面白いアプローチだな」

と感じながら採点してるそう。「数学は答えは一つかもしれないけど、アプローチは複数あり、そこには美がある」と聞いて目から鱗でした。

途中であきらめたらダメなんです。
スラムダンクで誰もが知ってる安西先生の有名な名言がありますよね。あれですよ、あれ。


イカすぜ リョーちんっ!!


いけね。これは桜木のセリフか。
でもそういうこと。
技術も…気力も…体力も…捨てるもの全て… 全てをこのコートにおいていきましょ。



以上、昨晩あかりちゃんが39度の熱が出た手羽がお送りいたしました。
もう絶対インフル。絶対リンクロウがうつした。皆さん、手洗いをほんとにマジで。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。