美大受験生の疑問にお答えする、略して「ビダモン!」シリーズをお送りしています。
これまでのビダモンはこちら。
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【合格発表編】
■【ビダモン2018】タマビとムサビの合格発表について
■【ビダモン2018】美大に合格した人へ その1
■【ビダモン2018】補欠は例年何番まで繰り上がるのか。
■【ビダモン2018】美大に合格した人へ その2
■【ビダモン2018】美大に合格した人へ その3
ムサビ中心に書いてますが、他美大入試でも参考になるはずです。
今日は「合格された方の5つの悩み」の後半を。
「学費をどうするか?」
私立美大の学費が高いことはわかってたけど、合格してから学費が現実的な問題になるご家庭も多いと思います。
ほんとに私立美大の学費が高いのか、読売教育ネットワーク「大学の実力検索」で、いくつか美術系大学の4年間の学費を調べてみました。
やはり高い。
特に私立美大は藝大の倍以上。
大学の給付奨学金だったり、一概に学費だけでは比較できないのだけど、学費以外に材料費などもかかるわけで、子供が突然「オレ、美大行くからお金よろしく」と言ってきても、簡単に「OK!」と言えるはずありません。
あ、データが間違ってるかもしれないので詳細は各大学公式情報をご確認ください。
と、これで終わらせるのもなんなので、「なぜ私立美大は学費が高いのか?」という話を私立美大職員の「言い訳」程度に書かせてもらいます。
美大の場合は「大学で制作する。4年間課題が出る」ことが基本です。
カテゴリとしては美大は文系に入るんですが、一般の文系大学と比べ学生さんの大学使用率が必然的に高くなります。「2年生までに単位取り終わったら、あとはほとんど学校に行かなくてもいい」なんてことはなく、4年間実技のために学校へ通うことに。ファインアート系だとほぼ毎日です。
つまり、4年生までのスペースを確保しなくちゃいけない。
また、美大のファインアート系やクラフト系だと1人あたり面積をそれなりに確保しないと作品が作れないし、デザイン系や映像系だとそれなりの機材や施設がないと授業が出来ない。やってること・必要なモノ・スペースは理工系にかなり近く、理系のような設備投資が必要になってきます。
美大って「経営的」にはかなり効率が悪い学校なんですね。
そして、美大だからといって実技だけやればいいわけじゃありません。
「大学」なので、いわゆる「一般教養科目」も普通に用意しなくちゃいけない。よく「え。美大って英語とか体育の授業があるの?」と聞かれるんだけど、だって大学なんだもん。普通にありますって。なかったら大学じゃないんですよ。
「一般教育」+「美術教育」の2つの機能を持たせることとなり、単純に考えれば一般大学の倍の費用がかかる。だからどうしても学費が高くなる、と。
これらが大雑把な「私立美大の学費が高い理由」です。
・・・・ええ。最初に書きましたが、あくまでも「言い訳」に過ぎないし、私達が何をいっても屁理屈にしか聞こえないし、どこがアドバイスなんだって話で・・・・。
美大・・・特にデザイン系は課題や制作が大変なので遊んだりバイトしたりする時間が思ってるほどありません。
手羽も制作を優先してたから毎週やるようなバイトは入れることができず、単発か春休みなど長期休業期間に長期バイトやって、それを制作費にあてる・・という感じでやってました。学費を補てんするほど稼ぐことはできず、本当に4年間通わせてくれた親に感謝してます・・・。
夜にバイトを入れてる学生さんもいるけど、相当学業との両立が大変になる覚悟は必要。
このあたりは親御さんとよく相談した方がいいですよ。美大に来てほしいけど、それで不幸になったんじゃ意味がないわけで。
ただ。
去年ムサビから東京藝大彫刻大学院に入った学生さんとこんな会話がしたことがありました。
手羽「藝大どうよ?バリバリ作ってるんでしょ?」
藝大生「ま、バリバリというか、工房が早く閉まっちゃうんで」
手羽「へー、イメージとしては藝大とか夜中まで作業してる感じだけど」
藝大生「建築系とかはそうかもしれないけど。なんせ土曜は作業ができませんから」
手羽「工房の使用時間的にはムサビの時より減ってるわけ?」
藝大生「ええ、まあ・・」
手羽「じゃ足りない分どうしてるの?」
藝大生「実は外にアトリエ借りて制作してます・・」
国公立芸術系大学は私立に比べて学費が安いけど、「施設を使いたおす」という点では私立美大の方が分があるかもしれません。特に文科省からの財政的締め付けが厳しくなってるので、どの国公立芸術大学さんを見に行っても「大変そうだなあ・・」というのが伝わってきます。
「そもそも美大って選択肢は正しいのか?」
これも現実的になった時にあらためて発生する迷いかもしれません。
詳しくは近いうちに書こうと思ってますが、前段だけ触れると「いえいえ。ポジティブに考えられる人間なら、むしろこれからは美大の時代なんっすよ!」です。
以上、「時代は美大!美大へ行け!」といつも語ってる美大愛好家といえども、現実にリンクロウが「オレ、タマビ行くから」と言ってきたら、やっぱり迷う手羽がお送りいたしました。
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。