ワークショップをやる時にお客さん目線で大事な14のS!

2018年5月12日(土)

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5月10日、ミッドタウンキッズワークショップ募集説明会が開催されました。

例年8月頭に東京ミッドタウンでムサビが子供向けのワークショップをやらせてもらってまして、その説明会です。去年まではミッドタウンアワード説明会と一緒にやってましたが、今年は独立させて開催することにしました。

あ、ムサビ生対象のミッドタウンアワード説明会が5月18日(金)に開催されることになったので詳しくはライブキャンパスをご覧ください。
「アワード説明会に参加できないので資料だけもらえますか?」という問い合わせがありましたが、「アワード関係者が応募用紙の記載のコツを直接語ってくれたり、過去の企画書をその場だけ特別に見せてもらえたり、個別相談もできます」が目玉なので、資料だけもらっても全く意味がなく。どうしても参加できない人はミッドタウンでやってる説明会に参加してくださいな。


話を戻して。
キッズワークショップ募集説明会では、手羽から恒例となった

「お客さん目線や商業施設でのワークショップで大事な14のS」という話をさせてもらいました。

・・・え?去年は「大事な12つのS」だったじゃないかって?よく覚えてますね(笑)
考え出したらどんどん思いついちゃって。アイデアが豊富な人間はほんと困ります。


手羽は美大主催の造形ワークショップを発見したら必ず子どもを連れて参加させてました。
多分造形ワークショップに参加した回数だと、うちの子は日本の小学生の中でベスト5に確実に入ると思います。でも「なんだ。これは自分のためじゃなくパパが行きたいから行ってるだけなんだ」ってことがバレてしまい、もう一緒に行ってくれなくなったけど(涙)

なので主催者側よりも参加者側としてワークショップを体験する機会が多く、そこで「これって誰のためにやってるんだろ?」と感じた美大主催ワークショップもいっぱい見てきてます。
あるワークショップに参加したら工作キットをそのまま使ったもので、「これで『美大生がやってるワークショップです』とは言ってほしくないなあ・・」と思ったこともあるし、教員が造形ワークショップの指導ができなかったことが明確で「こんなグタグタで全然子どもが楽しんでないワークショップなのに『うちの大学ではPBLやってます!』って自慢してほしくないなあ・・」と思ったり。どことはいいませんが。
んで、ミッドタウンとデザインハブのキッズワークショップもずっと担当してきたので、「どういうものが喜ばれるのか」「子供はやりやすいのか」「こういう失敗しがち」という話を説明会ではさせてもらってます。

あ、注意してほしいのは、ここで語っているのは「造形ワークショップの定義」や造形教育・研究効果的な視点ではなく、あくまでも「ワークショップを開いてもらった側」「参加者側の視点」です。「造形ワークショップとはどうあるべきか?」だと全然違う話になるし、そういう本はいっぱい出てるのでそっちを読んだ方がいいです。
あくまでも「参加者視点」ということをご理解ください。
でもオープンキャンパスでのワークショップとかでも参考になると思いますよ。


ではいきます。
最初のSは「Story」

「こどもが入り込みやすい世界観か?」です。

造形ワークショップは「見立てる」演出をよく使います。
「君は忍者だ!巻物を作ろう!」
「突然宇宙にやってきたぞ!!君ならどうする?!」
「怪獣が復活した!やっつけて捕獲しよう!」
「ここは海!みんなで魚をみつけよう!」
とかね。ストーリー全体がわかりやすい作りになってる方が世界観に入りやすい。
つまり、「今から何が始まり、何が目的で、何をやって、最後はどうなるのか」が無理のないストーリーで構成されてると、子供が何をやればいいのかすぐにわかるメリットがあるんです。単なる「風鈴を作ろう」な「工作」が目的であれば別にいらないんだけど。
また、ストーリーには「オチ」が必要で、最後の最後で「あ。こうなるんだ」というビックリ&喜びがあった方が満足度が高くなります。


続いては、
「Simple」

簡単なステップ・説明でできるか?

「ストーリー」とも関係するんだけど、子どもの制作ステップが少ない方がやりやすいし、なによりワークショップのテーマが簡潔になってる証拠でもあります。
造形ワークショップとしての中身を取るか、イベントの切り回しを取るかは難しい選択なんですが、たくさんの人に対応しなくちゃいけないのが大前提の商業施設のイベントであれば、作業工程が少ない方がよく、2つか3つ、多くても4ステップぐらいでおさめたい。
ワークショップ格言に「こどもはパネルを読まない」があります(手羽が作りました)
「パネルに説明書いてるんで見てね」じゃ、ほったらかしすぎるし、今までの経験上、子供たちは絶対にパネルなんて読みません。子供じゃなくても読みません。完全に主催者の自己満足。
面倒でも毎回口頭で説明するしかないんです。


次が「Short」

短い時間で完成できるか?

ちゃんとした作品を参加者に作ってもらったり、美術の楽しさ・気づきを生み出すにはやはり最低1時間、通常だと3時間ぐらいは必要です。
だけど商業施設では買い物ついでに「あ。なんかやってる」とその場で決める家族が多いから、長くても20分、できれば10分ぐらいで終わるものの方が喜ばれます。

「ずっと大盛況だった」というのは、よく言えば「人気があった」なんですが、悪く言えば「回転率が低い」ことを表してます。
進学相談会ブースとかでもそうなんだけど、「あの大学(学科)のブースはいつも行列ができてる。羨ましいなー」というシーンがあって。これも「人気があるから」「親身に相談のってるから」「行列が行列を呼ぶ」「行列があった方が見栄えがいい」とも考えられるけど、悪く言えば「説明が長い」「周りの状態が見えてない」でもあり。
お客さんの満足度は「並ばずにできた」のと「ずいぶん待たされた」のどっちが高いかっていうと、答えは明白ですよね。


次が「Safety」

当然「子供にとって安全かどうか」です。

意外と子供ができる行為は少ないです。
スティックのりも必要以上にベタベタ塗っちゃうし、色塗りも枠内におさめて塗ることはできないし、「何色と何色を混ぜると何色になるか?」なんてのは高度すぎ。
カッターをある程度使えるようになるのは中学生以上なので、キッズワークショップではカッターは持たせず、せいぜいハサミ。「とんがってるものは先っぽを丸める・わかりやすくする」などの工夫が必要になってきます。
また、「Safety」には「洋服のSafety」もあって、事前申込制のワークショップであれば服装の指定ができるんだけど、その場参加型だと「いかに汚れないように作れるか?」もポイントになってきます。
場合によっては雨ガッパやエプロンの準備も必要になります。


続いて「Space」

会場の空間づくり(装飾)もちゃんとて考えているか?

「美大がやるイベント」なので、もちろん変な空間は作れません。
「高校の文化祭看板みたいな、ユルユルでベコベコでムラムラでグラグラでガタガタな装飾になった」なんてのは特にミッドタウンのあの場所では絶対に許されない世界。
といって、「見栄えのいいものを簡単に設置し撤去できるか」もイベントでは大事で、当日2,3時間で設営・撤収できる必要があります。
そして装飾もそうだけど「人の流れ」もうまく作ってあげる必要があります。あっちいってこっちいって、は主催者側は理解できてるんだろうけど、参加する側から「まとめてよ」で。

ちなみに毎年「4方向に壁を作って空間を作る」「屋根を作る」という企画が1,2つ出てきます。「あの空間にはそれは合わない」のもあるんですが、「それを短い時間で制作・設営・撤収できるのか?」「その壁や屋根を作ってる時間があったら、ワークショップの中身をブラッシュアップした方がいいんじゃない?」ということで1次で落ちる可能性が高いです。
授業がない時に現地を下見しておくことを強くお勧めします。


ここから2つは「お客さん目線」というより「運営」としての意味合いが強いですが、ひとつめは「Schedule」

本番は「8月頭の2日間」と指示されています。
夏休みに入ってから集中的に制作することになるはずですが、サークル合宿等が入ってると完全に作業がストップします。でも課題と違って「忙しくて間に合いませんでした」は全く通用しません。
また、採用されたら社会連携チーム、それとミッドタウンさんと何度か打ち合わせをやってもらうことになります。400個以上のモノと装飾制作、そして打ち合わせをやるには、かなりスケジュール管理能力が問われます。


次に、「Staff」

スタッフを集めることができるか?

終日子供200人ぐらいに対応しなくちゃいけないワークショップです。
大人相手だと1テーブル1人ぐらいスタッフがついてればいいけど、子供だと2,3人必要になってくるのね。どうしても子供向けとなると対応人数が多くなってしまうんです。なので交代で休憩を取ったりすることも考えると、学生スタッフは20人ぐらい必要なはず。
夏休みの時期にどれくらい「ちゃんとした」メンバーを集められるかがポイントで、採用が決まったらすぐにメンバー確保に動いた方がいいです。


長くなったので続くっ!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。