【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 会期中編2

2019年1月14日(月)

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卒展出品経験と教務課時代の卒展担当経験、あちこちの美大卒展を見る趣味から、教育研究効果・美術的評価ではない視点の
「卒展ではこういう部分を気を付けるといいよ」
「卒業制作で陥りやすい点」

等テクニカルなアドバイスを30ヶ条にしてまとめました。多分一番欲しているのは精神論ではなくこういう話なのかな、と。
ムサビ生向きな内容になってますが、他美大の方、また卒展以外でこれから展示を考えてる人にも参考になると思います。

これまでの話はこちら。
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 準備編1
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 準備編2
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 場所決め編
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 制作編1
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 制作編2
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 制作編3
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 展示編1
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 展示編2
【美大4年生必見】手羽の卒業制作30ヶ条 会期中編1


今週ムサビ卒展っていうのにまだ書いてるわけですが、このシリーズもこれがラストです。


いろんな人がくる


  • 平成29年度ムサビ卒展風景。ファッションショー終わりのこういう人もフラフラ歩いてます(笑)

おかげさまでムサビ卒展は来場者が毎年増えてますが、来場者が増えるってことは「多様な人がやってくる」ってことでもあり。便利な表現だ(笑)

「説教を始める話の長いおじさま」なんてのはこの業界にいる以上あきらめるしかないのだけど、作品や機材、貴重品の管理はいつも以上にしっかりやった方がいいです。
悪意のある盗難のケースももちろん、ギャラリーにあまり行かない一般のお客さんだと「持ってちゃいけないものどうか」「触っちゃいけないものなのか」の判断ができないので、「見本の紙冊子」「サンプルパッケージ」とかだと悪意なく持っていかれてしまうことがあります。

そうそう。リンクロウやあかりちゃんが小学校低学年の頃はお皿とか小物だと平気で展示されてるものを手に取っちゃうんですよ。
2人は比較的展覧会慣れしてる子供だと思うけど、小さい子のデフォルトは「カバーがないのもは触っていい」なんです。「作品に触っちゃダメだからね」と会場に入る前にいくら言っても、触りたくなったものは素直に触ってしまう。
その純粋な気持ちは美術教育的には大事ではあるんですが、そういうケースも想定する必要がある、と。
ちなみにタブレットのサイズの画面があったら、今どきの小さい子は必ずスワイプかピンチします。むしろ「なんで触っても画面が動かないんだ?」という感じで。なので「モニタ画面は子供に触られてしまうものだ」と覚悟しといた方がいいっすよ。


そして個人情報管理も大事。
「興味のある方は連絡ください」と作品の横に電話番号やメアドを書いた名刺を置くのは悪いことではありません。でもこういう時は捨てアド・捨てアカにしときましょ。特に女性は。ほんとに「いろんな人」がいらっしゃるので。
また女性限定で住所をしつこく聞いてまわる人が出没することもあります。「嫌だけどしつこいし、断ったら怖い」と思ったらその時は「小平市小川町1-736 武蔵野美子」とでも書いときましょ。


お客さんはそれが作品かどうかはわからない


  • 平成29年度ムサビ卒展風景。展示室にあるものだけが作品ではありません

すんごく単純なことですが、単純すぎてこれに気が付いてない人も多いんです。

教室や展示会場にあるものは「展示作品」と誰もが認識できますが、屋外や廊下に設置した作品だと、それが作品かどうか、お客さんって判断つかないんです。

というのも、普段学内にいる私たちが最初作品かどうか見分ける方法は「普段そこにないもの=今回のために設置した作品」じゃありませんか?
つまり、普段のムサビの状態を知らない大多数のお客さんは「美大なんだから常にそこにあるものなんだろう=卒制作品じゃない」と素通りしてしまうんです。特に「美術作品=展示室にあるもの」というイメージがあるんで、屋外作品は一般の方は「常設されてるもの」と思ってしまう傾向にあります。2号館吹き抜けにある椅子や美術館横のブロンズ像と同じ扱いってことですね。
ある意味「大学が常設してるもの」と思われるのは完成度が高いってことなので嬉しいことではありますが、コンセプトがそうじゃなければ、一般の方向けに「作品」と知らしめる工夫が必要になってきます。



作品買取や展示依頼が舞い込んでも浮かれるな


  • 平成29年度ムサビ卒展風景

卒展中に「作品を売ってほしい」「制作してほしい」「うちのギャラリーで展示を」と声をかけられるのも関東の美大ならよくある話です。
ちなみに昔は月曜日まで卒展をやってたんだけど、入試日程が早まった関係で日曜日終わりになりました。でも月曜休みの画廊が多いから、ギャラリストに来てもらおうと思ったらほんとは月曜も開けるべきなんですよね。(それを知らない人も結構多い)


で、「画廊から声がかかった!」と喜んだら単なる貸しギャラリーの営業だった・・なんてこともあるのでちゃんと話は聞きましょう(それが絶対に悪いとは言えないけどね)。
依頼系だと「うちの店の空間が空いてるから作品展示して(絵を描いて)」話もよくあり、多くは「学生さんの発表する場を提供したい」「作品の置き場所に困ってるはず」と善意の気持ちでおっしゃてくれてます。(もちろん悪意をもって声をかけてる人もいますが)

ただ「美術業界・美大生の常識」と「一般の方の常識」は違うし、美術制作依頼をしたことがない人がほとんどだから、事前に条件を確認した方がいいです。
●壁に設置する方法がない(釘が打てなかったりピクチャーレールがない等)
●スポットライトもなく薄暗い空間
●従業員しか通らないスペース
●厨房のすぐ横で油がべったり
●描いたばかりの油絵・できたばかりの彫刻は結構臭いことを知らない
●恒久的に設置する彫刻はちゃんと固定しないと危ないことを知らない(むしろそっちにお金がかかる)
●半屋外で雨にあたる
●周りがゴチャゴチャしてる場所
●夜中しか作業できない(お店だとこれは多い)
●交通費どころか運搬費や材料費がでない
●制作以外の備品準備を頼まれる
●その場で「ついでにあそこも」と言われる
●展示期間が決まってないor勝手に撤去されてた
●「美大生が展示してる」という表現を使いたいだけ
●先方が上司や管理会社と調整してなくて設営日に現場で揉めてる(大人の世界じゃママある話)

なんてこともよくあって、多くはこれが悪意があってそうしてるわけじゃないのが非常に難しいところで・・。
この手の話は「言った言わない」「聞いた聞いてない」に必ずなるから、後でお互い嫌な気持ちにならないためにも、相手から口頭ではなく文字で条件をもらっときましょ。
特にお金のことは言いにくくても必ず最初に言うべきだし、その方が話が早いことが多いです。
微妙な案件は約束する前に早めに先生に相談を。

ちなみに「卒展で作品を売ります」と宣伝してる美大もあって「本来はそうあるべきだろ!そういうことをやらないから大学はウンヌン」という声もあったりしますが、行ってみたらなんてことはない、多くは学生さんが作ったハンカチや小物をブースで売る学園祭状態だった、なんてことがあるんで、ちゃんと現地で確認してから反応した方がいいです。
個人的には芸術祭で作品売るのは賛成だけど、卒制はどうなんだろ、とは思ってますが。


片付けまでが卒展


  • 平成29年度ムサビ卒展風景。寝てちゃダメよ

これはそのままです。
すぐに入試による入構禁止期間に入るので、「終わったー!」と浮かれてないで事前に片付けスケジュールを把握して手順を決めておきましょ。
準備はバラバラだけど、片付けは全4年生が一斉に動くので、台車や脚立などの備品はみんなが必要だと感じるタイミングが重なっちゃうのね。手際よく決めてないと思ってたようなスケジュールでは動けないはず。また、片付け日までに「残った備品や道具の貰い手を探しておく」のも大事な作業です。
片付けが全部終わって家に作品をもって帰るまでが卒展だからね!


そして最後はこれかな。

何はともあれ体調管理が大事
制作中もそうだし、講評の時もそうだし、展覧会中も片付け期間も結局はこれなんですよね。元気だったら最後はどうにでもなるわけで。
インフルが流行ってるから、4年生は最低限うがい・手洗いを忘れずに!
講評が終わった直後に気が抜けて体調が悪くなる学生さんも多いです。家に作品を持って帰るまでが卒(くどいので略)


以上です。
どの大学も卒業制作の追い込みに入ってると思いますが、頑張ってね!
 
 
・・・・ん・・・ひーふーみー・・・30ヶ条と言いつつ、35あるなあ・・・計算間違っちゃった。てへ。



以上、明日からムサビ卒展シリーズに入る手羽がお送りいたしました。
Facebookかtwitterで「名前(ペンネームでも可)」「場所」「(できれば)画像」「売り文句」を手羽宛てに送ってくれたら宣伝します。
あ、「手羽さんイケメン」も忘れずに。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。