美学校50周年展『美学校クロニクル 1969-2019 ~51 年目の現在~』に行ってきた

2019年8月23日(金)

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8月22日、市ヶ谷キャンパスでの打ち合わせを終えて、神田神保町へ。


  • 大原学園のビルがあちこちにあったり


  • 小学館があったり、

書店街だけあって出版や教育系会社のビルが立ち並ぶ中に

今日の目的地がありました。
この雑居ビルの3階に、手羽が昔から一度行ってみたかった場所がありまして。

美学校です。
美学校が創立50周年を記念して、8月25日まで展覧会『美学校クロニクル 1969-2019 ~51 年目の現在~』を開催してると聞き、このチャンスを逃すと一生入れない気がするので来てみたと。


  • あ、入口前にムサビ生が始めた物々交換所がある

ドアを開けて一歩入ると

なんだろう。この懐かしい感じは。

さて、美学校について簡単に紹介を。

1969年に現代思潮社という出版社によって新宿に設立された学校で、1970年に現在の場所に移転してます。学校といっても文科省の下にある学校法人ではなく、会社法人組織として運営されている「有機的な活動体」と説明した方が正しいかもしれません。

美術大学でも一目置いてる存在で、美大を卒業して美学校に入った知り合いもたくさんいるし、みんな確実に第一線で活躍してます。
以前だとBゼミセツ・モードセミナー文化学院などもそういう存在でしたが、Bゼミは2004年、セツモードさんは2017年、文化学院さんは2018年に閉じてます。また、岡﨑乾二郎さんが主任ディレクターを務めた近畿大学国際人文科学研究所の「東京コミュニティカレッジ 四谷アート・ステュディウム」も目指してた方向はBゼミなどと多分同じだったはずですが、こちらも2014年に突然閉校しています。
なので個人的にば美学校には頑張ってもらいたいと思ってて。

あ。そういえば、先日NHK「英雄たちの選択」という番組で文化学院や成城小学校を源流とする明星学園、玉川学園、和光学園などの自由教育(大正新教育運動)が紹介されてて、これがなかなか面白かったんですよ。教科書表紙に「動的教育」と書いてあって、「約100年前に日本は既にアクティブラーニングの必要性に気が付いてた」という話。8月28日に再放送があるからチェックしてみて。
ちなみに文化学院と文化服装学院(学校法人文化学園)は違う学校なのでお間違えなく・・。


美学校に話を戻して。
美学校設立の背景には、既存の学校教育に対するアンチテーゼがあり、

これは昔の恐らく全国アートスクール一覧に出した原稿だと思いますが、「文部省主導の従来の芸術教育と、大学を始めとする各教育機関のインチキ性に抗して、芸術各分野に渉るまっとうな指導を貫徹」と書いてあります。

こちらがフロア図。予想以上にコンパクトにまとまってた。

では教場を見ていきましょ。


  • 教場1はアーカイブを中心に展示


  • 昔のポスター


  • 募集広告


  • 今年たまたま発見された資料で、1970年の教場の設計図と講義案

私立美術大学といえども、文科省管轄で1割程度ですが助成金をもらっている立場なので、まったく好き勝手にやりたい美術教育ができるわけではありません。
文科省など国策に振り回されてるのも事実で、「グローバル!」「地方が大事!」「使えない教養よりもエクセルの使い方を教えろ!」「いやデータサイエンスだ!」と方針が変わったり、大学生が授業に出席するかどうかは学生の判断でいいと思うのに出席管理を厳しく指導されたり、某福祉大の件以降、留学生の出席管理が更に厳しくなったり、「実務家教員」の定義が固まってないのに実務経験教員の数を数えさせられたり、「オフィスアワーって意味があるのかな?普段から教員は学校にいるから学生は好きな時に相談しに行けばいいんじゃないの?」と感じてもオフィスアワーを設定したり、「時代はアクティブラーニングだ!!」と叫んでるけど、もともと美大はアクティブラーニング方式で授業やってるんで「今更何言ってるんだろ?」と思いながらも「あくてぃぶらーにんぐやってまーす」と言わないといけなかったり、文科省と厚労省の「教員の業務・労務」の解釈が違うので「そこ、国でちゃんと調整してくれないかしら・・」と思ったり。
全く縛りがなく芸術教育を行える美学校のアプローチがうらやましくもあり、葛藤も。


  • こちらが教場2


  • 壊れかけの超精密機器

開校当初の講師には、赤瀬川原平、中村宏、中西夏之、松澤宥、菊畑茂久馬、木村恒久、澁澤龍彦、巖谷國士、埴谷雄高らが名を連ね、以降も小杉武久、鈴木清順、木村威夫、吉田克朗、小沢剛、会田誠、久住昌之、菊地成孔、藤浩志、OJUN、中ザワヒデキ、Chim↑Pomリーダー卯城竜太、佐藤直樹、都築潤などすごいメンバーが教壇にあがっています。
教場2では講師や卒業生たちの作品をメインに展示されてました。


  • 版画・製版系の機材がそろってる感じ


  • 手羽が通ってた画塾を思い出します。高校生の頃ぐらいまではこういう空気感があちこちに残ってた


  • あ。ムサビでも教えてた吉田克朗先生だ。若い・・


  • これOJUNさんの作品じゃないかしら。この距離感で見れるなんて


  • 赤瀬川さんの授業風景と授業で使ったスライド


  • 後ろには例の1000円札が。こういう状態で授業をやってたってほんとうらやましい

廊下を抜けて小教場へ。


  • 50周年を記念してワークショップで作られた校歌


  • 根本敬さんの作品


  • 廊下に貼ってあった漫画

会場はこちらだけではなく、数分歩いた場所の

東方學會の裏あたりに

美学校スタジオがあり、こちらでは

在学生50名以上が参加する「Artrans Gigmenta 2019〜美学校 第51期生 アンデパンダン展〜」をやってます。
この規模での現役受講生参加展覧会は、1983年にアクシスギャラリーで開催して以来とのこと。
・・ってアクシスギャラリーって昔はデザイン系じゃなくても展示できたのね。



以上、出かける前に読んでた雑誌に

桜美林大学芸術文化学群の新キャンパスの広告が出てて、新キャンパスよりも「オビゲイ」と略すことを知ってびっくりした手羽がお送りいたしました。「ビダイ」のビと「ゲイダイ」のゲイが入ってて欲張りな印象(どこが)
オビゲイ、使わせてもらいます。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。