【 #美大受験 2022 】手羽のブルーピリオド-入試でこんなことが起きた-

2022年2月8日(火)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

美大受験生の疑問にお答えする恒例の「#美大受験」シリーズをお送りしてます。
#美大受験では、ムサビまたは関東美大の一般入試(AOや推薦入試じゃない入試)を具体例で使うことになりますが、基本的にはどの美大受験にも参考になるはずです。
これまでの話はこちらから▼
東京五美大2022入試カレンダーからわかるたった1つのアドバイス
コロナ対応の入試変更点は重要な情報だから、マメにチェックしよう
ムサビの実技試験で絶対に忘れちゃいけないものを1つ断言します
美大実技試験でのたった1つのアドバイス
美大入試で家を出る前に確認すべき情報と持ち物は?
学科試験当日に聞いても役に立つアドバイスを1つだけ
入試の朝、中央線が止まった。さてどうする?
*間違った情報を書いている可能性もあるので、募集要項等大学公式情報で必ずご確認ください。
 
  
今日は日芸・東京造形・タマビ・ムサビの試験が唯一重なる日で、なおかつ女子美の合格発表日。

ムサビ入試は彫刻学科があり、ここだけの秘密、男性モデルか石膏像が出ます!


え。言っていいのかって?
大丈夫。ちゃんと募集要項に書いてあるんで(笑)

数年前まではムービング(モデルさんが試験中ずっと動いてる)だったり塑造もありましたが、今はデッサンのみで、モデルか石膏か選ぶようになっています。

モチーフをはっきりと書いてるのはムサビだと彫刻学科だけですね。


というわけで、たまには固い情報ばかりじゃなく、手羽の受験の想い出を書きますか。
今でも語り継がれる伝説の年だったので。
 
=====

手羽が受験の時、ムサビ彫刻の出題はそれまでずっと自画像でした。なのでムサビ対策用に自画像を必死に・・・すいません、4枚ぐらいしか描いてなかったです・・。
手羽が通ってた画塾は直前まで石膏像を木炭で描かせるところで、10月ぐらいから東京造形大対策用にモデルデッサン(当時東京造形大は女性ヌードだった)、12月ぐらいからムサビ対策用に自画像をやりだすペースでした。
もともと第1志望がムサビ油絵学科だったもんでデッサンで自画像はほとんど描いてなくて(油絵は2次で落ちた)。「自分は一浪して来年東京藝大受けるんだろうなあ」とぼんやりと思ってました。
まだムサビ彫刻が倍率9倍ぐらいあった年です。


そしてムサビ入試突入。
試験場は忘れもしない4号館。螺旋階段の上で寒い中、ドアが開くのをずっと待つ。

ようやくドアが開いて、アトリエに入ると・・。

モデル台とイスが待っていました。
ムサビ彫刻入試で初めてモデルさんを使った年だったのです。
 
ポーズは女性コスチューム(Tシャツ+スパッツ)で、体をちょっとひねった座りポーズ。
フシギなもので何故か今でも受験の時のポーズは覚えてるんですよね。それ以外のことはほとんど忘れてるのに。
あ、用語解説すると、洋服を着てれば「コスチュームモデル」、下着ぐらいしか着用してない場合は「セミヌード」、モデルさんが座っていれば「座りポーズ」、立ってれば「立ちポーズ」と呼びます。
 

モデルデッサンは東京造形大対策で随分練習してたから、自画像よりは全然得意でした。むしろモデル台を見た瞬間に「あ。もしかしていけるかも」と思ったくらいです。
ただ、造形大彫刻は木炭デッサンだったから人体デッサンは木炭でしか描いたことがなくて。当時ムサビ彫刻は鉛筆デッサンだけだったんですよ。


鉛筆デッサン+モデルを描いた最初の絵がムサビ入試本番っていうね。なめてるでしょ?
もう完全に手探り状態。鉛筆でどう描き込んでいけばいいのかがわからない。入試中に「あ、こうやるといいんだ」と試しながら描いてました(笑) 
鉛筆の描き込みじゃどうあがいても負けなので、とにかく形と運動感を取ることに半日時間をかけました。くじ引きで決まった場所も最前列右斜め前ですごく良かったから、描いてて楽しかったのを今でも覚えてます。


試験も午後に入り、みんな仕上げに入りだしたところで予想もしない事態が発生します。

その日は朝からどんよりとした曇り空。

当時のムサビ入試アトリエ会場は、自然光を使うために室内の照明を消灯した状態でやってました。
で、午後ポーズを過ぎたぐらいから外がさらに暗くなりはじめ、3時を過ぎると室内が真っ暗になってしまったのです。

手羽が通ってた画塾は自然光で描かせる画塾だったんで、暗くなっていく自然光には全然慣れてたから構わずガンガン描いてたけど(むしろ蛍光灯の下だとどう描いていいかわからない)、後から聞いた話だと受験生から「真っ暗で見えないし描けない」と苦情が多数出たそう。
慣れてると正直半日明るければ、午後はモデルさん見なくても描けるもんだけどね。


試験監督があわただしくなってきて、残り3ポーズ目というところで試験監督がこう宣告しました。
「照明を消した状態は次のポーズで終わります。最後の2ポーズは『紙を変えて』、室内の照明を点灯した状態でもう一度描いてもらいます。採点は2枚を見て決めます。」

えっ。

ほんとに新しい紙が配られて、室内の照明がつき、最後の2ポーズがスタート。
あ、モデルさんはずーーーーと立ってる状態ではなく、20分やったら5分休憩、そしてまた20分を繰り返す形で進行し、その20分のターンを「1ポーズ」といいます。

2ポーズしかないってことは、クロッキーとデッサンの中間ぐらいで描かないと中途半端で終わる可能性が高い。1ポーズ目でがっつりポージングを押さえて、2ポーズ目で仕上げました。「おっ、意外と2ポーズでも描けるもんだな」と自分に関心したっけ。
教授に聞いた話だと、2枚一緒に見ると受験生の形を捉える形跡がわかるので、採点しててすごく面白かったそうです。
しかし、突然のことなのに受験生分の予備デッサン用紙があるってすごいですよね。
「もしかして最初から2枚描かせるつもりだったんじゃないか?」と受験時は疑ったけど、職員になって確認したところ、やはり緊急対応だったそうです。

それ以来ムサビのデッサン試験は「全室点灯状態」で行われるようになったとさ(手羽イチロウ著「ムサビのことはオレに聞け」より)
 

 
この手羽の受験の想い出から2つアドバイスを。
1つ目は「想定外のことは起きる」
それは受験生も学校側も。
なので「え。え。突然傾向変わるの?!」とか「聞いてないんだけど」とパニクるよりは、その状況を楽しんだ方がいいです。

2つ目は「美大入試はやっぱり最後は運」
アドバイスでこれを言っちゃおしまいのような気もしますが(笑)、美大受験生なら「うんうん。そうよね」とうなづいてくれるはず。
もしモデルデッサンじゃなくて自画像だったら、もし自然光に慣れてなければ、くじ引きの場所が悪ければ、手羽は確実に現役で受かってなかったと思ってます。
 

 
以上、ヌードモデル経験が画塾時代にある手羽がお送りいたしました。
上述したように東京造形大彫刻はヌードモデルだったけど、小さな画塾だからプロのモデルさんを頼むお金がなくて(笑)
なので造形大受験希望者の男性だけで交代でヌードモデルをやりあってたんです。もちろん全裸っす。
今考えるとよくやったもんだというか、それくらいの覚悟があったということですね。
しかし受験のために受験生自らヌードモデルをやる画塾って他にもあるのかな?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。