2004年から毎年ユニクロが行っているTシャツのデザインコンテスト「UTGP(UTグランプリ)」が今年も開催されます。
選ばれた作品は製品化されて、世界18の国と地域のユニクロ全店(約2000店舗 ※2016年6月時点)で発売されるというスケール感。「ファッションやグラフィックでネクストジェネレーションとなる才能のある人たち」を発掘し世界に向けて紹介したい! という目的で行われているこのコンテスト、美大生にとっても大きなチャンスといえるのですが、実際に美大生に聞いてみると、応募したことがあるという人は少ないみたいなんです。
そこで、「興味はあるけど…でも…」という美大生の本音と尻込みもひっくるめて、UTGP担当者さんに直接お話を聞いてみよう!ということで、編集部は元美大生でもあるイラストレーターのわかばやしたえこさんと一緒にユニクロ本社に行ってきました。
美大生と公募の間にある微妙な壁
─ お会いしたのは、株式会社ユニクロでUTGPを担当されている上林礎(かんばやし・もと)さん。ジャケットの胸元からは、昨年のUTGP受賞作として製品化されたPIXAR作品がモチーフのTシャツがのぞいてます。
上林:UTGPは年齢や国籍に関係なくさまざまな方から毎年数千点のご応募をいただいています。でも、意外と美大生の方からの応募って少ないんですよ。
わかばやし:なんかわかります。私も美大生時代には、研究室に貼ってあるポスターでクリエイティブ系の公募やコンテストの存在を知ることがあったんですが、ちょっと躊躇してしまってあまり応募したことはなかったです。
なんだか、自分の作品を社会に出すことの怖さっていうか…落ちたら凹むし、周りの人に知られたら恥ずかしいし(笑)。「こんな大企業の人が私の作品を見てくれるのかな?」っていうのも世間知らずの学生としては自信がなくて。
上林:もちろんご応募いただいたものはすべてきちんと審査させていただきますよ!
過去のUTGPの受賞者で一般企業の営業職の方がいたのですが、「学生のうちに応募していれば人生が変わってたかもなぁ」とコメントされていたのが印象的でした。もし学生時代に受賞していたらデザイナーでやっていく自信がついて、きっと一般企業には就職しなかっただろうということで。
わかばやし:言われてみればたしかにこういうコンテストって、美大に在学中のうちにばんばん応募しちゃったほうがいいかもですね。もし受賞できたら、将来の進路を決める後押しになるし、就活にも実績として使えますもんね。
上林:そうなんです。だから「ちょっと怖い」「落ちたら凹む」という壁を乗り越えて、ぜひ若い方にこそ応募してほしいんですよ。
とはいえ、審査する側は応募作品に何を求めてるんだろ?
わかばやし:美大生時代の自分を思い出してみると、こういう企業発のコンテストって主催側から何を求められてるのかがよくわかんなかったです。授業でやってる課題と同じ要領でいいのかなぁ? とか悩んだりして。
そもそも企業側には「こういうデザインがほしい」っていうイメージ があるものなんですか?それとも純粋に“良いデザイン”ならなんでもいいのかな?
上林:両方ありますね。たとえば昨年のUTGPではモチーフはPIXAR作品で、テーマが「フレンドシップ(友情)」だったので、キャラクターを使ってこのテーマをいかに表現しているかが選考基準のひとつでした。でもそれを抜きにしても審査員が「発想がおもしろい」「シンプルだけど洗練されている」と感じたデザインは入賞していましたよ。PIXARキャラクターへの愛があふれているものとか。
今年のテーマは「任天堂(Nintendo)」!
─ 2016年7月から募集が開始される「UTGP’17」のテーマは「任天堂(Nintendo)」。マリオシリーズ、ポケットモンスター、星のカービィ、ゼルダの伝説、ピクミンからスプラトゥーンまで、古今の名キャラや任天堂ロゴもデザインの対象になります。
特別審査員はなんと、スーパーマリオブラザーズの生みの親でもある任天堂代表取締役クリエイティブフェローの宮本茂氏。
わかばやし:美大生ってゲームが好きな人が多いイメージがあるので、今年のテーマは有利かもしれないですね。先ほどの話にも出たキャラ愛なら負けないって人も多いはず。
ちなみにキャラクターを表現するときには、どの程度まで自分のタッチに寄せていいものなんですか?
上林:基本的に素材の提供というのはしていないので、ご自由に描いていただいてOKですよ。わかばやしさんならどのキャラクターを選びますか?
わかばやし:自分のタッチで描くならマリオかな? みんなの中に絶対的なイメージがあるキャラクターのほうが、崩して描いたりしてもちゃんと気付いてもらえるし。
わかばやし:ちなみに私のタッチってこんな感じのものが多いんですけど、これまでの入賞作品と見比べてみるとえらく密度が違いますね…。
上林:みっしり描き込まれたデザインじゃなくても全然いいんですよ! Tシャツとして魅力的なら、ささっと描かれたような素朴なイラストとかも大いにアリです。
わかばやし:テーマはあるけど、そこへ向かうデザインの手法は自由ってことなんですね。え、じゃあ、たとえば立体でマリオを掘ってそれを写真で撮ったものとか、油彩で描いたカービィをスキャンしたものとかもアリなんでしょうか?
上林:うわ、それ凄そうですね(笑)。応募規定に沿ったオリジナルデザインであればもちろんOKです!
今回の攻略ポイントは「幅広い世代の中にある同じキャラへの愛」
上林:今年のテーマは「任天堂(Nintendo)」ということで、昨年のPIXARにおける「フレンドシップ」のような明確な小テーマは設けていないのですが、ひとつ重要なキーワードになると思われるのが「世代」という要素です。
マリオというキャラひとつとっても、世代によって思い描くイメージはさまざまですよね。初期8ビットのカクカクしたものだったり、タヌキマリオだったり、ヨッシーに乗っていたり…。親世代から子世代まで、みんなの心の中にあるそれぞれのキャラクター像をデザインしてほしいなって思ってるんです。
わかばやし:マリオ観でその人の世代がわかりますよね。私は子どもが生まれたばかりなんですけど、昔のマリオと最新のマリオを親子リンクとかペアルックで着たいかも。
わかばやし:あと、女性向けでゲームモチーフのかわいいTシャツってあまり多くないから需要ありそうですよね。ちょっと隠しモチーフになってるような、さりげないデザインとか。
上林:そんな感じで「自分が着たい!」というものをぜひデザインしてもらえればと思います。UTGP受賞作のTシャツってとても人気があるんですよ。通常のUTのデザインと違った、自由な発想のデザインだから、目立つのかもしれません。
わかばやし:自分のデザインしたTシャツがユニクロで目立っているところはちょっと見てみたいですね。やっぱり「売れそうなデザイン」が有利なんですか?
上林: 「売れるデザインかどうか」という観点はあります。ただ「売れるデザインとは何か」っていうのはこちらとしても定義できていないんですよ。良い物が売れる、という結果論しかない。だからこそ、私たちが想像できないような創造性あふれるデザインを美大生のみなさんに作り出してほしいんです。
わかばやし:「着たくなるTシャツデザイン」の研究のために、ショップに行って他人の買い物カゴをチラッとのぞいたり、電車の中でどんな人がどんなTシャツを着てるのか観察したりするのもヒントになりそうですね。美大生はこれから夏休みだし、夏休み中の課題のつもりでやってみてもいいかも。
上林:多少やり過ぎちゃってもいいので、みなさんの思い出のマリオや慣れ親しんだキャラクターのイメージをTシャツにぶつけてもらえたらうれしいです!
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▼UTGP’17 開催概要
任天堂 (Nintendo) のゲームをテーマに、Tシャツデザインを大募集!
応募資格:年齢、性別、国籍など一切問わず、日本国外からの応募も可能。
特別審査員: 宮本 茂(任天堂 代表取締役クリエイティブフェロー) & 任天堂特別審査員チーム
募集期間:2016年7月1日~8月31日・ 日本時間23:59まで
受賞作品は、2017年春夏に商品化され、全世界のユニクロで販売予定。
・大賞(1点) 賞金1万USドル、宮本茂が列席する授賞式へのご招待、任天堂宮本茂サイン入りNX(仮称)、特別記念賞品
・2位 (1点) 賞金3000USドル、宮本茂が列席する授賞式へのご招待、任天堂宮本茂サイン入りNX(仮称)
・入選(複数点) 賞金500USドル
作品応募方法:UNIQLO UT特設サイト内にあるWeb応募フォームより
ご応募の詳細はこちらから: UTGP'17公式サイト>>
主催:株式会社ユニクロ
問合先:UTGP2017事務局([email protected])
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(聞き手/吉川晶子、撮影/出川光)
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