【孫泰蔵さんに学生がピッチ】「スタートアップにとってのデザインとアートの意味」に行ってきた

2019年10月1日(火)

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なんと!今日で手羽美術大学★が1200記事目!!
ばんざーい!ばんざーい!!
・・ま。公開したけど諸事情で削除した記事もあるので、本当はこれで1210記事目ぐらいだからなんだけどね(ぼそっ)


9月29日(月)、手羽は打ち合わせで朝から市ヶ谷キャンパスにいました。
夕方7階をのぞくと、

学生さんがずっとプレゼンの練習してる。
そりゃ相手が相手だから、気合が入るよね(笑)

てなわけで昨日はこちらが開催されたのです。

武蔵野美術大学公開講座2019「スタートアップにとってのデザインとアートの意味」
●⽇時:9 ⽉30 ⽇(⽉)18:30-21:00(18:00開場)
●会場:武蔵野美術⼤学市ヶ谷キャンパス7階
●主催:武蔵野美術⼤学

今回は山崎先生の進行。

で、登壇されたのはなんと!

スタートアップ⽀援を実践している孫泰蔵さんなのです!

手羽が孫さんにお会いするのは2017年以来2回目。
【YAHOO!JAPAN本社も】第1回X デザインフォーラム「スタートアップとデザイン」に行ってきた!
この時、孫さんのお話を聞いて新学科構想は間違ってないと確信したっけ。ちなみに山崎先生に初めてお会いしたのもこの時です(笑)

孫泰蔵さんとは、世界を代表する連続起業家であり、IT 関連スタートアップを多く成功させた投資家。
現在はスタートアップの育成を通じ、中⻑期視点で社会課題を解決するCollective Impact Communityという新業態を標榜するMistletoe(ミスルトウ)のFounderとして、社会課題の定義、それら課題を解決しうるスタートアップ形成に尽⼒する傍ら、複数のITスタートアップで役員も兼務し、数多くのスタートアップを成功へと導いています。

ちなみにMistletoeとはヤドリギのことです。
ちなみにちなみにこの写真の孫さんはデザイン・ラウンジスタッフと市ヶ谷スタッフに似てる・・。


X デザインフォーラムではOUT OF THE BOX DESIGN THINKINGやイノベーションの話でしたが、今回はどんな支援をされてきたかを中心に話されました。
いくつか紹介しましょう。

最初は「もう『冷蔵庫』は要らない」

ルワンダは内線でほとんどの交通インフラが破壊されてしまったため、緊急用の血液や薬を陸路で運ぶのが困難でした。なおかつ血液などは冷蔵が必要なんだけど、冷蔵付き自動車や病院側の冷蔵施設が整備されてなく、せっかく支援された血液の3分の2がパーになってたそう。

そこでUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と呼ばれる無人飛行機を使った緊急医療用物流に対して支援。自動操縦のドローン(これは回転翼ではなく固定翼)が山奥の病院などについたら荷物をパラシュートで落としてそのまま帰還するというもので、陸路で4時間かかっていた輸送が15分で済ませられるようになったそう。

既にこちらは実装されていて、5000人以上の人命を救ってます。まだ「ドローン」という言葉が一般的じゃなかった5年前にこのビジョンを語ってるのがすごい・・。


次に「もう『下水道』は要らない」

一言で説明するなら「ポータブル水循環システム」。
水のリサイクリングシステムですね。
あ、この画像だけ見ちゃうと「ああ。被災地とかで便利っすね」で終わりそうですが、この可能性がすごくて。

下水道は巨大な公共インフラ事業だけど、老朽化によるメンテナンスコストが負担になっています。
特に地方では深刻で、福岡の親が「東京の水道水はおいしい」と言ってて、山がそばにある過疎化の進む田舎よりも東京の水の方がきれいなんです。
人間は水道管がきてるところでしか生きていけないから、過疎化→さらにインフラの老朽化→さらに過疎が進むの悪循環が生まれてるけど、このシステムがあればどこにでも住めるようになる。
また、キッチンやシャワールームは排水管の関係で設置場所がかなり限られるけど、どこにも置けるようになるから建築の在り方も変わる。すごっ。
詳しくは以前孫さんが語ったこちらの記事をご覧ください。
東大生ベンチャーが挑む世界の水不足解決


3つめが「もう『病院』は要らない」

既存トイレに取り付けられる「尿成分検知システム」のスタートアップ支援。
ヘルスケアIoT企業のサイマックス、 資金調達実施と取締役2名就任により経営体制を強化
高度医療になればなるほど医療費がかかるから、早期発見が一番いい。そうすれば病院も必要なくなる。

このシステムで糖尿病はもちろんのこと、すい臓ガンなど現在は18種類ぐらいの病気がわかるんですって。
これのすごいところは、ガンなどの成分を調べてるわけではなく、尿のデータを取り、そのデータの推移をディープラーニングで分析して「この傾向はすい臓ガンの可能性がある」と判定してるんだとか。
テーマは「トイレを最発明する。トイレ2.0」


そして後半はテーマに合わせて、孫さんの好きなアーティスト紹介。
「コンテンポラリーアーティストはビジョナリーアントレプレナーに近い」とおっしゃっていて、デュシャンはもちろんのこと、

ジャクソンポロックの作品も鑑賞者との関係性で初めて「作品」が生まれると言え、「絵画とは何か?」「創作とはなにか?」を考えさせられる。クリティカルシンキングの鬼。

ポロックといえば、手羽は東京造形大卒の太田祐司さん「ジャクソン・ポロックの新作をつくる」が大好きで、一見バカバカしいのだけど、これも「作者とは何か?」をすごく考えさせられる作品なんです。動画をご覧ください。

 
孫さんの話で印象的だったのは「ホームランも打ったけど三振も多い」という言葉でした。

バックに投資家がいるベンチャーキャピタルだったらとてもリスクが怖くて投資はできないが、Mistletoeは後ろに投資家がおらず、得られた資産で投資するからリスクが取れる。
だから、ほとんどは失敗するけど、そこには知見や教訓が残り、本人も成長する。
「教育は最大の投資」ともおっしゃってました。

 

孫さんの基調講演のあとは、武蔵野美術⼤学⼤学院クリエイティブリーダーコースのメンバーによるスタートアップ提案プレゼン。

短い時間でどんどんスタートアップ提案をし、「孫さん、会場の皆さん、ぜひ支援してください」とまさにエレベータピッチ。

孫さんにプレゼンできるなんて、なんて贅沢な時間・・・うちの学生さんたちがうらやましいっす・・。

孫さんのアドバイスを聞いてると、スタートアップは「何故それをやらないといけないのか?」な使命感と「最初から成功することはない。とりあえずやってみて、失敗しても何度でもやり直す」の熱い気持ちが一番大事なんだな、と。
なんでもそうだけど。



以上、

いつも1階MUJIでカレーを食べてるように見えるかもしれませんが、いつも食べてます、てかMUJIのレトルトカレーを家に常備してて、この前買って帰ろうとしたら若杉先生に「またカレー買ってる」と言われた手羽がお送りいたしました。
だっておいしいんだもん。
きっとこういう安定志向はイノベーション起こせない。

東京4美大合同SD研修が終わる土曜まで更新休みます。
なんとかプレゼンデータは1時間分まで絞った。あと30分・・。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。