【学費とは?】ムサビ生の学びを止めないために-新学事予定と学修支援

2020年5月5日(水)

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5月4日深夜、長澤学長からかなり重要な発表がありました。

新学事予定と学修支援について -ムサビ生の学びを止めないために-(5/4更新)
コロナ禍におけるムサビの対応ポリシーと対応策です。
*5月4日現在の状況を踏まえた対応策であり、今後の状況変化によってもちろん変化します。常に大学WEBサイトや学生さんはライブキャンパスで最新の情報をご確認ください。


学長メッセージを引用しながら解説していきましょう。

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恐れているのは、このコロナ禍による経済的影響により、道半ばにして学修を断念せざるえない学生が生まれてくることです。みなさんが、このコロナ禍によって一人として欠けたりすることのないよう、「ムサビ生の学びを止めない」ために、大学としてできる限りの支援を行うことが、私に課せられた最大の責務だと考えています。
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一番大学として避けたいのは、長期化によって、退学を選択しなくてはならない学生さんが増えることです。他大学が多く取っている「一律●万円給付」という方法は仕組みとしてわかりやすく、大学オペレーションとしても1ルールでいけるし、支払い手続きもやりやすかったりします。
なにより「平等感」がありますよね。
ただ、今よりこれから家計が苦しくなるご家庭が増えるはずで、はたして本当に困ってる学生さんたちを「一律●万円給付」で救えるのだろうか、という疑問は残ります。


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 本学では「コロナ禍により学びを断念する学生を出さない」ことを第一に、可能なかぎりの学修時間を保障することを前提に、個別的、重点的、中長期的に学生のみなさんを支えていく支援策を検討してきました。様々な大学で、様々な学生支援策がとられていますが、この困難な状況が長期間に及ぶことを考えると、本学では学生のみなさんの実情に合わせ、しっかり寄り添った支援をするために、可能な限り「持続性のある学生支援」を財政的にもできるよう独自の学生支援を講じます。今年度の授業開始にあたり、今回お知らせするのは、緊急事態措置に伴う新たな学事予定と緊急対応の第一弾の支援策です。
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そこで「長期のコロナ禍によってムサビ生の学びを止めないためにはどうしたらいいか?」「美大の学びを提供するにはどうしたらいいか?」を最優先に考え、個別的・重点的・中長期的な対応をムサビは取ることにしました。
正直、かなり困難な道を選択したことになります。


まず、
■学事スケジュール全体の見直し
学生さんや保護者の方の最大の疑問は「アトリエとか施設使えないのに施設費取るのはなんで?」「オンラインだと質が下がるのに同じ学費?」だと思います。

ムサビの学費の考え方については、やはり昨日発表されたこちらをご覧ください。
学費に関するお問い合わせについて(5/4更新)
学費の仕組みはかなり複雑なので、誤解覚悟で説明すると、
・「授業料」は、一授業科目の履修単価ではなく、学位取得に必要な教育プログラムの提供費。
・「施設費」「維持費」は、施設や機器備品の整備・補修・維持・管理・拡充のための費用。

という考え方があります。(くどいですが、本当はもっと複雑です)
今ある建物やPC、図書館にある本は先輩方の学費によって建設・購入したものを在学生が使ってるし、ライセンス費やリース費は学生さんが施設を利用してなくても発生してるし、今後新たな建物を建てたり補修したりしなくてはいけません。
また、全く同じことをオンライン授業でやろうとしたら質は確実に下がりますが、オンラインに合わせた内容を先生方は検討されています。

「学費は単に履修単価や利用費ではない」「オンラインによるデメリットもあるけどメリットもある」というのが法人の言い分・・・ではあるんですが、これを読んで「屁理屈にすぎない」「そういうことを聞いてるんじゃない」という気持ちは美大OB、大学1年生の親としてもすごく理解できるところ。
対面や工房などを使った授業、そして授業内外で友達と同じリアル空間を共有する時間あってこそ大学、特に美大の価値であり、それがなくて学費全額払えってやっぱり変じゃない?と。

そこで1年間の学事を組み替えました。

右が当初予定されていた学事、真ん中が4月20日発表の修正版、そして左が今回発表された再修正版です。
この画像ではどう変わったかわかりにくいからPDFで大きくして確認してもらうとして、ポイントを抽出すると
・5月11日からオンラインでのガイダンス、18日からオンライン授業開始
・アトリエ・工房での制作を必須とする授業は開設時期を7月に変更
・夏休み(通信スクーリング期間以外)、春休み、芸術祭期間、年末年始を授業時間にあてる
・卒業制作期間を1月から入試明けの2月に移動、卒展を3月中旬
・卒業式を3月27日実施
・9月以降6時限目、日祝日の施設利用を検討中

となります。

現在、ムサビは5月31日まで入構が禁止されています。
この状態がいつまで続くかは全くわかりませんが、コロナが少し落ち着き、7月に大学を利用できるようになれば、とりわけ卒業年次生は対面授業・施設利用は当初予定してた時間数を確保できるよう組みなおしたのです。
つまり、オンライン授業でやれるor代替え可能なものはオンライン授業でやるけど、施設利用時間はコロナ前と基本変えない方針を取っています。途中入試が挟まったりしてるので決してこれまで通りとは言えませんが、今考えられる全ての時間を学生さんに提供しよう、という覚悟。


「それじゃアルバイトをする時間が無くなる」という方もいらっしゃるはずなので、新たに作ったり、既存ルールを拡充した経済的困窮増大に対する学修支援が5つ。
■緊急対応給付型奨学金(30万円・給付型)
・修学継続が困難になっている通学在籍学生を対象
・制度設計中だけど、従来の奨学金とは異なる迅速で柔軟な対応を取る


■緊急学修支援金(30万円・長期貸与型)
・30万円を迅速に無利子で貸与
・返済期限は卒業後原則5年以内
・5月11日から利用可能


■緊急貸付金(5万円 or 10万円・選択制短期貸与)
・5万円 or 10万円を無利子で迅速に貸与
・在籍年度内の返済。返済完了後は同じ年度内であれば、何度でも借りることが可能
・5月11日から利用可能


■学費延納・分納の納付期限再延長
・既に始めていた延納・分納の最終振込期限を前期分は8月31日まで、後期分は1月31日までに変更(延長)
・既に延納を申請されている方の自動的に再延長


■教育ローンの利息負担
・金融機関等の教育ローンを活用している場合、卒業するまでの期間の利息を大学が負担

「すぐに払わなくちゃいけない家賃代がない」「コロナのせいでアルバイトができない」という場合は「緊急貸付金」、もう少し大きな金額だと学費であれば「教育ローン」「延納・分納制度」、生活費だと「緊急学修支援金」を使ってもらって、支給までに時間がかかる新たな「緊急対応給付型奨学金」既存の国・民間・公共団体・大学がやってる奨学金等が支給されるまでつないでもらう・・という流れを想定して設計されてます。
もうおわかりだと思いますが、「平等」ではなく「公平」な考え方。

「全員に一律●万円支給!」「総額〇億円の対応!」「施設相当額を一部返金!」に比べるとインパクトが弱い、地味な支援策に見えますが、(わかる人はわかるはずですが)かなり手間と費用のかかる方法で、本当に困ってる方を一時的ではなく長期的に支援していこう、と。
というのも前期だけ、今年1年だけで完全収束するとは思えず、経済的には後期、来年度の方がつらい状態になることが予想されます。大学運営上も長期的・持続的に支援するためには、このような方法が今取れる最善策と考えた結果です。

ただ、これがベストな答えとは誰も思っていません。違う考え方も全然あるはず。
学費のところで、学長が、
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本学はこの激動・不確実・複雑・不透明な状況そのものを、新たな学びに変換していきたいと考えています。
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と書いてますが、「激動・不確実・複雑・不透明」はVUCAのフレーズであり、特にコロナ対応への正解なんて誰も持っていません。VUCAの時代は「リーダーシップのもと即実行(プロトタイプ)→見込みがあれば突き進む→なければすぐに撤退」が基本なので、そういう対応でやっていくしかないと手羽も思ってます。


「図書館が使えなくて困ってる」という方は、
●郵送等による図書の貸出サービス
・大きさ・厚さ・冊数によって限度あり
・詳細は後日図書館のWebサイトで発表。

貴重書は郵送することはできないし、 図書館スタッフの手作業なので発送までにお時間をいただくことになりますが、ぜひご利用ください。


その他だと、既に学生さんに発表していた2つの対応策がこちら。
●オンライン授業の受講支援(Wi-Fiルーター、iPadの無料貸出)
Wi-Fiルーター(月間無制限、2GB/day)の無料貸出
・iPad(10.2インチWi-Fi 32GB、スペースグレイ)の貸出準備中

学生アンケートでご家庭の情報環境が想定したよりも整備されていることがわかりましたが、さらに隙間を埋めるためにWi-FiルーターとiPadの貸出を行うことになりました。
ただ台数が限られているので、希望に沿えない場合があること、また必要性が極めて高い方々へ優先することをご理解・ご協力願います。

●教科書等のオンライン販売
世界堂武蔵野美術大学店の全面協力のもと、オンライン販売
世界堂さんが世界堂のオンラインで教科書を購入できるようにしてくれました。
なおかつ配送料や代金引換手数料はすべて大学と世界堂武蔵野美術大学店で負担します。
世界堂さんにはかなり異例な対応でご厚意のなにものでもありません。ムサビ生のために本当にありがとうございます。


先ほども書きましたが、大学運営としてかなり困難なやり方を選んだことになります。
「公平」は悪く言えば人によって差が生まれ、必ず「なんであの人だけ」「私にはメリットがない」と不満が出てくるので、完全に性善説にのっとったやり方。でもムサビの学びを止めさせないために、そこはムサビ生や保護者を信じよう、と最後は学長のリーダーシップで決まりました。


最後にもう一度学長のメッセージを引用して終わりにします。
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 本学が永年培って来た世界水準の造形教育の質を維持し、学生のみなさんが、大学生活を全うできるように、私たち教職員も一丸となってしっかり支えます。この余儀なくされた経験で、世界は変わろうとしています。この惨事の後に出現するであろう「New Normal」ともいうべき未来社会を、学生のみなさんが、本学教育で育んだ「創造的思考力」で貢献し実現していくことを、私は確信しています。
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ここまで学長たちが敏速に決めてくれたので、あとは事務局がどうすばやく対応できるかにかかってるし、事務局の創造的思考力も問われてるように感じてます。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。